本研究では、野球を実践するハワイ日系二世の政治的身体を事例として、彼らのアイデンティティの形成プロセスに関して考察に取り組んだ。フィールドワークでは、主に第二次世界大戦前後の時期に太平洋を跨いでプレーした二世選手に関する資料収集と聞き取り調査を実施し、具体的には、日本・ハワイ・米本土の新聞、雑誌、書籍、個人的な手記、ライフヒストリー資料、パンフレット等の史資料を包括的に収集した。考察では、二世選手が彼我(ハワイ・日本・米本土)のプレー・スタイルの模倣を通じて、自己と他者の同一化を志向しつつも、同時に微妙なズレと差異が(再)生産されるなかで、ナショナルあるいはエスニックな水準でいかなるアイデンティフィケーションを実践したのかについて論じた。本調査の一部は、すでに学会・研究会で発表しており、今後は学界のみならず、一般読者向けの書籍で成果を公開することを予定している。
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