本研究では、メタボリックシンドローム診断基準検討委員会において2005年に作成されたメタボリックシンドロームに関する診断基準値について、下肢の筋骨格系能力との相互関係を明らかにすることを目的とした。平成20年度は、横断的調査研究により、メタボリックシンドローム診断基準項目の測定値と筋骨格系能力との関係を調査した。 被験者は高齢者男女計50名であった。筋骨格系能力としては、膝および足関節における最大トルク、下肢(大腿部および下腿部)の骨格筋の筋厚、歩・走行テストを実施した。骨格筋の筋厚は超音波法を用いた。歩・走行テストにおいては、10m歩行テストにおけるタイム、ピッチおよびストライド長を、ビデオカメラを用いて計測するとともに、歩・走行動作のキネマティクス的評価を行った。次に、メタボリックシンドロームに関連する基準値として、Body Mass Index (BMI)、ウエスト、血圧および血圧検査による糖代謝異常・脂質代謝異常に関する指標の測定を行った。 上記の測定の結果、横断的研究ではメタボリックシンドローム診断基準項目値と筋骨格系能力との間の相関関係、相互関係は、歩行テストの成績を除いて見られないことが明らかとなった。 続いて、平成21年度には、3ヶ月間の歩行プログラムによる介入を行い、筋骨格系能力の変化を縦断的に調査した。その結果、歩行プログラムを実施したものに関しては、体重およびウエストの減少がみられ、歩行テストの成績にも向上が認められた。
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