これまでの研究によって、知覚-運動スキル学習に対して「漸減要約フィードバック」は習得段階と保持段階において効果的であることを明らかにしてきた。しかし、「漸減要約フィードバック」が効果的である原因は未だ不明であり、また高齢者の知覚-運動スキル学習に対して効果的でない原因も明らかにされていない。 そこで、本年度ではまず「漸減要約フィードバック」が効果的である原因を明らかにするために、学習者にフィードバックするKRの情報の質に着目した。つまり、漸減的に要約提示されるKRの中でも学習に有効なKRとそうでないKRがあり、「漸減要約フィードバック」はすべてのKRが要約提示され、必ず学習者が必要とする(学習に有効な)KRが提示されるために、高い学習効果が得られると仮定した。この仮説を検証するために、すべてのKRを要約提示する「全KR提示条件」と学習者自身が必要とするKRを選択する「学習者選択提示条件」を設定し、学習効果の違いを証した結果、両者間に学習効果の違いは認められなかったことから、学習者が選択したKRが知覚-運動学習に対して有効な情報であり、そのKRをフィードバックすることによって高い学習効果が得られると考えられる。 しかし、上記の条件間にはKRの情報の質の違いの他にも情報量の違いも存在しているため、次の実験では「学習者選択条件」に対して、学習者が必要とするKR以外のKRを実験者が選択して維持する「学習者非選択条件」を設定し、学習効果を比較検討した結果、両条件間に学習効果の違いは認められなかった。このことから、「漸減要約フードバック」の高い学習効果は学習者が必要とするKRが提示されていたからではないことが明らかとなった。この知見をもとに、今後はより有効なフィードバック情報の提示方法が明らかにされていくことが期待される。
|