平成20-21年度の研究では、「漸減要約フィードバック」の高い学習効果の原因を同定するための研究として、フィードバック情報の質と提示のタイミングに着目した結果、フィードバック情報の提示タイミングに学習効果の差が示された。これは、フィードバック情報の即時提示は学習者のフィードバック依存性を高め、保持能力の獲得を阻害するが、フィードバック情報の遅延提示によって学習者のフィードバック依存性が抑制され、高い保持能力を獲得できたことを意味する。つまり、漸減要約フィードバックは、学習段階に沿った漸減的提示と学習者自身のエラー検出能力を高める遅延提示によって、高い学習効果を発揮できるフィードバック・スケジュールであることを明らかにした。 そこで、平成22年の研究では、フィードバック情報の漸減遅延提示に関して、知覚-運動スキル学習に対する最適な提示タイミングを明らかにすることを目的とした。フィードバック情報(結果の知識:KR)の提示頻度を、1ブロック目は18回、2ブロック目は9回、3ブロック目は6回、4ブロック目は3回と徐々に減少するように設定し、さらにKRの提示タイミング条件として、即時提示群と遅延提示(短)群、遅延提示(中)群、遅延提示(長)群の4群を設定した。 その結果、習得段階と保持テストにおいて4群間に有意な差は示されなかったが、遅延提示(短)群は即時提示群に近い値を、遅延提示(中)群は遅延提示(長)群に近い値を示した。遅延提示のタイミングが1試行分しか変わらないにも関わらず、このような違いが示されたことから、遅延提示(短)群と遅延提示(中)群の提示タイミングの間に知覚-運動スキル学習に対して最適な遅延タイミングが存在している可能性が示唆された。
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