研究概要 |
本研究は,スポーツ地理学を拓く端緒として,サンディエゴ大都市圏におけるマリーナの立地と,ヨットやモーターボートを中心とした沿岸域利用を解明し,調和のとれた空間利用の創出に寄与することを目的としている。これまで,東京大都市圏において明治期から現在までの社会的背景の変化に注目しながら,ヨットやモーターボートというスポーツがいつどのような社会階層に普及し,それらの活動拠点となるマリーナがいかにして展開してきたのかを解明してきた。本研究は,東京大都市圏での研究蓄積と比較することで,沿岸域におけるスポーツ行動や生産活動などの共生メカニズムを,自然環境・産業構造転換・社会階層・行動空間の諸側面から総合的に解明することを目指してきた。 2010年度は,前年度までに設定した地域類型の中から代表性のあるマリーナを選定し,客層や集客圏,レクリエーション行動について分析を進めた。その結果,伝統あるサンディエゴヨットクラブではサンディエゴ湾口北部に広がる高級住宅地から高額所得者層が,湾奥部に位置するカリフォルニアヨットマリーナではヒスパニックも多く居住するサンディエゴ南部から中産階級が利用するという棲み分けがみられた。こうした現象は東京大都市圏でも見られたことである。またマリンスポーツを含む観光都市としてのサンディエゴ都心部のレクリエーション行動の分析から,マリーナの親水景観を活かしたウォーターフロントにおいて歴史建築や競技場,コンベンションセンターなどを活用した都心部再開発の有効性も検証できた。
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