運動不足とそれに起因する生活習慣病者の増加は先進国共通の問題である。そのような背景から、国内外では、行動科学や認知行動療法の技法を活用した運動促進プログラムの開発と効果の検討が盛んである。しかし、運動を含めた健康行動の変容介入での成功事例は運動への関心が比較的高い者である場合が殆どである。そこで、本研究では、必すしも運動実施を希望しない無関心層を対象とした行動科学的アプローチ法の検討を行った。 研究1では、施設などに集まって運動を行う集団介入と自宅中心にて運動を行う在宅個別介入に焦点をあてた介入プログラムを開発し、以下のような観点からプログラムの有効性を検討した。研究1では、積雪寒冷という環境条件により日常身体活動の実施に制限を受けている北海道民73名(集団運動群40名、個別運動群30名)を対象に2つの介入を提供した結果、3ヶ月の短期では集団運動群の減量効果が大きかった。減量効果を介入時期(季節)に分けて分析を行うと、屋外運動の制限を受ける冬季にて減量効果の差が認められ(夏季では差がない)、屋外での運動が制限される時期では集団運動が効果的である可能性が高いと考えられた。また、研究2では、日常ほとんど運動実施していない睡眠不良者37名を対象に、日常身体活動量を増加させる認知行動療法介入を行った結果、歩行運動量が約2.8倍に増加し、睡眠指標の改善も認められ、運動とはいえない日常活動の増加でも、睡眠障害を軽減しる可能性が示された。研究3では、2型糖尿病男性の睡眠障害の有病率とその関連要因を検討した結果、メタボリックシンドローム(MS)の保有、またMSの危険因子数が多いほど睡眠障害を有するという結果が得られ、睡眠障害の予防・改善にMSが関連している可能性があることを示した。
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