研究課題
高炭酸ガスの呼吸循環亢進作用を運動トレーニングに応用するために、高炭酸ガス吸入が安静時および運動時の生理学的応答に及ぼす影響を、低酸素ガス吸入が及ぼす影響と比較対照し、明らかにすることを目的とした。自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷運動を基本的な実験プロトコールとし、1)空気吸入、2)高炭酸ガス吸入(酸素濃度21%、炭酸ガス濃度6%、窒素バランス)、3)低酸素ガス吸入(酸素濃度12%、窒素バランス)の3条件下でデータ収集した。被験者は健康な成人男性であった。次のことが明らかになった。呼吸循環応答において、最大心拍数は高炭酸ガス吸入下、低酸素ガス吸入下ともに空気吸入下よりも低かった。高炭酸ガス吸入下では、肺胞内と血中での炭酸ガス蓄積が安静時から生じ、運動中一貫して換気量が増加し、呼吸交換比は低下した。一方、低酸素ガス吸入下では酸素摂取量が減少した。酸塩基平衡において、高炭酸ガス吸入下では、呼吸性アシドーシスにより運動時血液アシドーシスが強まった。一方、低酸素ガス吸入下では、呼吸性アルカローシスにより運動時血液アシドーシスが弱まった。代謝状態において、高炭酸ガス吸入下では、嫌気的代謝産物の血中への蓄積が制限された。一方、低酸素ガス吸入下では、嫌気的代謝が亢進された。本研究の結果から、高炭酸ガス吸入下では運動時の換気閾値が早まったり、乳酸閾値が遅れたりする可能性が考えられる。従って、高炭酸ガス吸入を運動トレーニングに応用する際には、これらを考慮してトレーニングを計画する必要性がある。
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13^<th> Annual Congress of the European College of Sport Science, Book of Abstracts
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