研究概要 |
本研究の目的は,異なる酸素濃度(低酸素,高酸素)環境を用いて,スプリント能力の向上に役立つトレーニング方法について明らかにすること,および日本選手の国際競技力の向上に向け、世界に先駆けて実践することである。この目的を達成するため、本研究では,以下の課題を設定している。 研究課題1 異なる酸素濃度環境下におけるスプリント運動の負荷特性 研究課題2 異なる酸素濃度環境を用いたスプリントトレーニング効果の検討 研究課題3 異なる酸素濃度環境を用いたスプリントトレーニングの実践 このうち,平成20年度は,主に研究課題1について検討した。具体的には,男子学生5名を対象として,低酸素環境下(酸素分圧14.5%)、高酸素環境下(酸素分圧30.0%)および常酸素環境下において自転車エルゴメータを用いた30秒間の全力ペダリング運動を実施させた。運動の前後に,筋バイオプシー法による筋サンプルの採取を実施することによって筋中エネルギー基質の変化を比較した。その結果,低酸素環境下と常酸素環境下との間には発揮パワーに差が認められなかったが、高酸素環境下における発揮パワーは、低酸素環境下および常酸素環境下に比べて高値を示す傾向にあった。一方、低酸素環境下におけるペダリング直後の筋中乳酸濃度は、高酸素環境下および常酸素環境下に比べて高値を示す傾向にあった。これらの結果から,高酸素環境下は常酸素環境下に比べて、骨格筋に大きなメカニカルストレス(物理的な負荷)を与えることができ、一方、低酸素環境下は常酸素環境下に比べて、代謝的な負荷を与えることのできる可能性が示された。ただし、これらの結果は、少ない被検者数の中で得られたものであるため、今後さらに検討していく必要がある。
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