本研究の目的は、「持久性トレーニングに伴う血漿蛋白質(アルブミン)の増加量、好気的運動能、体温調節能の改善の個体差は、アルブミン合成遺伝子の転写調節領域の一塩基多型(SNPs)の違いに起因する」という実験仮説を検証することである。本年度は、運動トレーニング反応性に及ぼす候補アルブミン合成遺伝子SNPsの特定を行った。若年者18名について、実験の内容および意義を文書および口頭で十分に説明し、実験参加の同意を得た。被検者に連続5日間の持久性トレーニング(自転車エルゴメータ、最大酸素摂取量の70%強度、30分/日、気温30℃、相対湿度50%)を行わせ、その前後に、血漿量(エバンスブルー色素希釈法)、血漿総蛋白質およびアルブミン濃度(比色法)を測定した。血漿総蛋白質およびアルブミン量は、血漿量に血漿総蛋白質およびアルブミン濃度を乗じて算出した。また、最大酸素摂取量(自転車エルゴメータ多段階漸増負荷法)、暑熱環境下運動時(上記と同様)の体温調節反応(食道温上昇に対する前腕皮膚血管反応[体積変動法]および胸部発汗量[カプセル法])および心拍出量(インドシアニングリーン色素希釈法)を測定した。さらに、トレーニング後に採取した血液(EDTA-2Na)から得られた遺伝子サンプルを用いて、アルブミン合成遺伝子の転写調節領域における3つのSNPsを解析(TaqManプローブ法)した。得られた遺伝子情報は、信州大学医学部医療情報部において匿名化で管理している。その結果、SNPsの出現頻度は、SNPs-A(CC:CT:TT=5:8:5)、SNPs-B(AA:AG:GG=3:10:5)、SNPs-C(AA:AG:GG=4:9:5)であった。今後、各種測定結果を匿名化データベースに再連結して解析し、次年度に発表予定である。
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