研究概要 |
本年度は、アルブミン合成遺伝子の転写調節領域の一塩基多型(SNPs)が血漿蛋白質の増加量に影響するメカニズムを明らかすることを目指し、急性運動に対する血漿蛋白質量の増加反応性に加え、血漿蛋白質合成速度を測定した。まず、研究機関の変更に伴い、血漿量の測定手技を確立した。若年者5名を被験者とし、エバンスブルー色素希釈法および一酸化炭素再呼吸法を用いて血漿量の測定を行い、両者間に良好な相関関係の認められることを確認した。次に、若年者2名を被験者とし、急性運動に対する血漿蛋白質量の増加反応性、および、血漿蛋白質合成速度の測定を実施した。最大酸素摂取量(VO_<2max>、多段階漸増負荷法)の測定に加え、人工気象室(環境温28℃、相対湿度40%)内での座位安静時に、運動前、運動負荷(72分間、80%VO_<2max>,4分間+20%VO_<2max>,5分間×8回)終了直後、1、2、3、4、5、および、23時間後に採血を行い、血漿量、血漿総蛋白質およびアルブミン濃度(ビューレット法およびBCG法)を測定した。血漿総蛋白質およびアルブミン量は、血漿量に血漿総蛋白質およびアルブミン濃度を乗じて算出した。血漿蛋白質合成速度の測定は、蛋白質および糖質(熱量:3.2kcal/kg、蛋白質量:0.18g/kg)を運動直後あるいは2時間後に摂取する2試行を実施し、2試行間の血漿総蛋白質量の差から評価する方法を用いた。その結果、血漿蛋白質量の増加反応性、および、血漿蛋白質合成速度には大きな個人差が認められた。全ての測定を行った被験者が2名であったことから、匿名化の問題により、SNPsの解析およびSNPsが血漿蛋白質量の増加反応性におよぼす影響に関する検討は行わなかった。以上、本年度の研究成果から、一定の運動負荷に対する血漿蛋白質量および血漿蛋白質合成速度の増加反応性に大きな個人差の認められることが明らかになった。これらの成果は、体力向上のための効果的な運動指導方法確立のために重要な基礎データとなる。
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