研究概要 |
非活動筋代謝が亢進する有酸素性運動の条件を近赤外分光法により検討することを目的とした.健常成人男性7名を対象とし,自転車エルゴメータを用いて30分間の中等度運動と60分間の低強度運動の2条件の有酸素性運動を実施した.非活動筋は右腕前腕屈筋群とした.運動前後および運動中は右腕前腕部を心臓の位置の高さに調節したアームレストの上に置き,筋活動が生じないようにした.非活動筋代謝の変化は,近赤外分光法を用いて一時的動脈血流遮断法により測定した.低強度運動では運動開始後20分以降に非活動筋代謝が有意な増加(P<0.05)を示した(安静時の1.2倍).中等度運動では運動開始後15分以降に非活動筋代謝が有意な増加(P<0.01)を示した(安静時の1.3〜1.5倍).運動開始15分以降の非活動筋代謝の増加は,低強度よりも中等度運動の方が有意に(P<0.05)大きかった.これらのことから,低強度運動では運動時間が20分以上,中等度運動では運動時間が15分以上の運動条件が,運動中の非活動筋代謝を亢進させることが示唆された.さらに,低強度運動よりも中等度運動の方が,運動中の非活動筋代謝の増加は大きくなることが示唆された.本研究では,運動時の非活動筋代謝の亢進に効果的な有酸素性運動の運動時間と運動強度の条件を示すことができた.本研究成果は運動療法プログラムを作成する上で新たな情報になりうるものと考えられる.
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