研究概要 |
平成21年度の研究においては、筋の低酸素化により高強度運動時の有酸素的代謝が低下し、無酸素的代謝によるエネルギー供給が大きくなることが示唆されたが、筋の有酸素的代謝の変化を十分に明らかにできたわけではなかった。そこで、平成22年度は筋の有酸素的代謝に焦点を当て、低酸素環境での運動が活動筋の有酸素的代謝に及ぼす影響について検討を行った。 健康な成人男性7名(年齢:27~34歳)を対象に、磁気共鳴装置内において漸増負荷の動的膝伸展運動を、低酸素環境(吸気酸素濃度:20,9%)と低酸素環境(吸気酸素濃度:13.0%)とで疲労困憊に至るまで行わせた。大腿四頭筋を被験筋とし、筋内のPCr濃度、Pi濃度、pHを^<31>P-MRSで、筋内の酸素動態をMRSで測定した。NIRSを用いて筋酸素消費量を求めるため、安静時および各強度での運動終了直後にカフの加圧による一時的動脈血流遮断を行い、その時のHbO2の減少速度から筋酸素消費量を算出した。また、ダグラスバッグ法により肺酸素摂取量(VO_2)を測定した。 運動パフォーマンスは、低酸素下では常酸素下よりも有意に低かった(p<0.01)。最大下の同一絶対強度でのVO_2、筋酸素消費量、筋内PCr濃度、筋内pHはいずれも常酸素下よりも低酸素下で有意に低い値を示した(p<0.05)。疲労困憊時においては、VO_2および筋酸素消費量は、低酸素下で常酸素下よりも有意に低い値を示し(p<0.01)、筋内PCrは条件間で差はみられなかったものの、筋内pHは低酸素下で常酸素下よりも有意に低い値を示した(p<0.05)。 以上のことから、低酸素下では常酸素下と比較して、同一絶対強度での運動時においては活動筋における有酸素的エネルギー供給量が減少し、無酸素的エネルギー供給量が増加することが示唆された。
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