【目的】カルノシン(β-Ala-His)は、広く動物の骨格筋中に存在し、高強度運動時の乳酸生成による筋pH低下を抑制する働きを持つと考えられている。筋pH低下は、筋活動の低下をもたらす一要因であるため、骨格筋カルノシン濃度を増加させ筋緩衝能を高める事が、運動パフォーマンスの向上につながることが示唆される。そこで食事由来のカルノシン長期摂取が骨格筋カルノシン濃度及び高強度運動パフォーマンスに及ぼす影響を調べた。 【方法】カルノシンの供給源として、カルノシンおよびその関連ペプチドであるアンセリン(β-Ala-1M-His)を豊富に含む鶏胸肉より抽出物を調製した。健常成人男子14名にこの抽出物を30日間摂取させ、外側広筋中のカルノシン含量の変化を調べ、同時に高強度運動(30秒間全力ペダリング)時のピークパワーと平均パワーの変化を調べた。 【結果】摂取期間前のカルノシン濃度が全被験者の平均よりも低値を示した8名において、摂取期間後の有意なカルノシン濃度上昇が確認された。さらに、同8名においてカルノシン濃度増加率と高強度運動における平均パワーの増加率との間に強い正の相関関係が認められた。 【結論】骨格筋中カルノシンは高強度運動パフォーマンスを規定する因子の一つであり、食事によってカルノシン濃度を上昇させることがパフォーマンスの向上につながることが示唆された。
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