研究概要 |
二重標識水法(DLW法)を用いて幼児期を対象にエネルギー消費量を評価した研究は国内では我々が報告した1日総エネルギー消費量(TEE)のみであり,1日総エネルギー消費量を安静時代謝量と活動エネルギー代謝量に分けて検討した報告は皆無である.小児期の体力低下は既に乳幼児期から生じているという指摘もされ,肥満傾向の幼児にも注意が必要とされている社会的背景から考えると,幼児期おけるTEEをDLW法を用いて明らかにするとともに,TEEを安静時代謝量(REE),活動エネルギー代謝量(PAEE)に分けて検討することが必要である.本研究は,DLW法を用いて幼児のTEEを算出し,呼気ガス分析によりREEを,TEEとREEよりPAEEを算出し,この時期のエネルギー消費量について評価することを目的として研究を行った. 測定は保育園に在籍する3歳から5歳までの園児男女60名を対象とし,人体計測,皮下脂肪厚,身体組成測定,DLW法によるTEE,呼気ガス分析によるREEを測定した.TEEは,尿サンプルを安定同位体比質量分析計により算出した. 本研究の結果,TEE,REE,PAEE,と身体活動レベル(PAL)には有意な性差はみられず,それらは身体組成とも関係性を示さなかった.本研究で定量された幼児期のエネルギー消費量は,TEE 1374.5±223.8kcal/day,TEE小体重74.3±10.4kcal/kg/day, PAEE 353.7±194.3kcal/day,PAEE/体重19.1±10.5kcal/kg/day,であり,この年代の基準的値を提示できたものと考える.
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