メタボリックシンドロームに代表されるような生活習慣の改善を要する慢性疾患の増加に伴い、医師が診察において、情報提供や治療への動機付けを含めた総合的な患者教育を行うことが重要になっている。テレビ、新聞、インターネットなど多くの健康・医療情報源の中でも、かかりつけ医はほぼ全ての患者が利用する情報源であり、その情報・助言は大きな影響力をもつ。しかし、現在多くの医学部で行われている医療面接教育が主に初診外来診察を想定していることから、患者教育のスキルについては体系的な教育・評価が遅れている。本研究は、診察における患者教育のためのコミュニケーション・スキルに焦点を当て、既存のコミュニケーション分析手法を発展させた新たな分析手法を開発して、慢性疾患の再診外来診察におけるコミュニケーションの分析を含む実証研究を行い、医学教育におけるコミュニケーション教育の改善に向けた提言のための基礎的データを得ることを目的とした。本年度は、新たなコミュニケーション分析手法の開発に向け、ベースとなる既存の分析手法として、これまで医療コミュニケーションの量的研究によく使われてきたRoter Interaction Analysis System(RIAS)に関する文献のレビュー、関連研究者との議論を行った。また、医療コミュニケーションに関する実証研究、理論、モデル等の文献をレビューして批判的吟味を行った。
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