本研究の目的は、小規模医療施設における栄養指導の治療効果および経済効果を明らかにして、小規模医療施設での栄養指導の積極的な導入を促すことである。 昨年度は、管理栄養士による栄養指導が実施されている診療所に協力を依頼し、栄養指導を受けた経験のある糖尿病患者(約150名)を対象に、レトロスペクティブ・スタディを開始し、半年〜1年間の調査を終えた。1年分のデータが集まった患者をみると、(1)薬物療法を受けず栄養指導のみを受けた群(44名)では、栄養指導開始後12ケ月以上薬物無処方が継続された患者が77.2%(34名)であり、HbAlcは栄養指導開始時の7.0±0.7%から4ケ月後には6.3±0.5%、12ケ月後には6.1±0.4%と有意に改善した。一方、22.8%(10名)の患者では栄養指導の効果は充分でなく12ヶ月以内に投薬が開始された。(2)栄養指導開始前より薬物療法を受けていた群(30名)では、栄養指導により66.7%(20名)の患者でHbAlcが有意に改善した(HbAlc、栄養指導開始時 : 7.8±1.1%、半年後 : 6.9±0.9%)が、指導後8ケ月程度経つとHbAlcが上昇を始めた。これは、食事療法に熱心な患者であっても栄養指導開始後、半年程度経過すると定期的な栄養指導の継続が難しくなることが一因と考えられた。33.3%の患者は栄養指導に無反応であり栄養指導によるHbAlcの明らかな改善は見られなかった。 今後は更に300名を目標に対象患者を増やすと共に、調査期間を3年まで延ばし栄養指導の治療効果を明確にするとともに、薬物療法や合併症の治療に要した医療費を算出して、栄養指導により医療費の削減が可能であるかを検討する計画である。
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