研究概要 |
運動による睡眠改善効果は、睡眠が普段から良好な人では見られにくいため、睡眠が良好でない人で検討すべきとの指摘がなされている。そこで本研究では、睡眠質問紙とアクチグラフにより不眠傾向にある人を抽出し、睡眠を改善するための運動方法を探究することとした。前年度に実施した大学生24名を対象としたアクチグラフ実験の結果をさらに分析したところ、アクチグラフから得られた睡眠の客観的評価が、ピッツバーグ睡眠質問票で得られた睡眠の主観的評価と大きく乖離していることが明らかとなった。平成21年度の実験においても、質問紙をもとに睡眠が良好でない大学生10名を選抜したが、睡眠が良好な被験者が多く含まれていることが、アクチグラフ結果から明らかとなった。そこで、本年度の睡眠実験では、事前のアクチグラフ評価により睡眠効率(総睡眠時間/全就床時間)が85%未満であった被験者を睡眠不良群、85%以上であった被験者を睡眠良好群にグループ分けし、各群で運動が睡眠に及ぼす影響の違いを検討することとした。睡眠不良群は3名、睡眠良好群は7名であり、アクチグラフで記録した睡眠効率の平均値は前者が79.6%、後者が97.1%であった。本実験では就床3時間前と就床5時間前と2つの時間帯において中等度強度の運動を40分間実施した日の睡眠を、運動を実施しなかった日の睡眠と比較した。その結果、睡眠不良群は就床3時間前運動日、就床前5時間前運動日とも非運動日に比べて睡眠が改善する傾向が認められた(睡眠効率はそれぞれ86.6%,86.8%,75.8%)。睡眠良好群はもともと非運動日の睡眠が良好であったため、運動による睡眠改善効果はほとんど認められなかった(非運動日の睡眠効率が95.7%に対し、両運動日とも91.8%であった)。平成22年度には睡眠ポリグラフの結果を解析するとともに、さらに被験者数を増やして検討を重ねる予定である。
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