研究概要 |
22年度は前年度に実施した小中学生およびその保護者を対象とした調査結果を国際会議で報告するとともに,家族を研究単位とする生態学的観点から家族機能尺度と親子の自発的運動習慣との関連性を検討した。 S県I市の小児生活習慣病予防検診を受診した小学生、中学生の保護者を対象とした調査から,家族の主観的健康状態と家族が一緒に実施する運動・スポーツの実施頻度と有意な関連があることを報告した(第3回国際身体活動・公衆衛生学会)。さらに,構造方程式モデルを用いて,家族が一緒に実施する身体活動の実施頻度および食事の頻度が「家族の健康習慣」を共通因子としていること,「家族の健康習慣」は家族全体の健康状態を規定することを明らかにした(第20回ヘルスプロモーション世界会議).これは、家族による運動や食行動が家族全体の健康状態を規定することを明らかにした点で重要である。 東京都A市の満3歳から満14歳の子どもをもつ家族から層化無作為抽出した保護者2,862人を対象とした調査では,家族機能と運動実施頻度には有意な関連が認められた.子どもの年代別にこの関連のパターンが異なった.親子の自発的運動習慣と子育て世代家族の家族機能は相互に関連しており,この関連の程度は子どもの年齢の影響を受けることが示唆された. これらの研究成果は,子育て世代家族の家族機能は子どもの発育発達状況とともに変動していること,この家族機能は家族全体の健康状態をある程度反映していること,さらに家族が一緒に実施する自発的運動習慣が家族の健康状態に影響を及ぼすことを示唆する.我が国における子どもを持つ家族の健康づくりを推進する上で,親や子といった家族成員の健康行動を推奨すると同時に,家族が一緒に取り組む自発的な健康行動を推奨する科学的根拠を得ることができた点で大変有意義であると考えられる.
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