運動不足や身体活動量の低下に伴う慢性代謝性疾患の増加は、我が国における深刻な問題である。先進国における活動・運動不足は、社会経済構造などの変化によるものと考えられているが、一方、自発的な運動意欲の低下も深刻な原因の一つと考えられている。私たちは高い自発的運動を行うモデル動物(SPORTS rat)を確立して、自発運動(運動意欲)を調節する因子の検索を行ってきた。これまでに、モノアミン酸化酵素(MAO)の調節による脳内モノアミンの上昇がこのモデル動物が高自発運動性を示す要因の1つであることを明らかにしてきた。このモデル動物は非運動状態(安静飼育下)でも対照ラットと比較して顕著に内臓脂肪が低いことから、本研究ではこのモデル動物の脂質代謝について更なる解析を行った。その結果、エピネフリンなどのモノアミン上昇が脂質代謝亢進を亢進させ、内臓脂肪量を調節している可能性を示唆する結果が得られため、同一のメディエーター(モノアミン)が自発運動と内臓脂肪量の両者を調節していると可能性が考えられた。高モノアミン状態により、脂肪組織でのβ-Adrenergic receptorを介するAMP-activated protein kinaseの活性化とAcetyl-CoA carboxylase活性の抑制によって内臓脂肪量の調節していることが明らかになり、誌上にて報告した(Mawatari K et al. Obesity 2010)。さらに、Ghrelin前駆体(prepro-Ghrelin)由来因子をはじめとする摂食調節因子が自発運動やエネルギー代謝を調節するという結果が得られた(平成22年度日本糖尿病学会総会および日本栄養食糧学会総会にて発表予定)。これら神経伝達物質による運動意欲とエネルギー代謝、両者の調節機構の解明は、今後更なる展開が期待されると考えられた。
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