生活習慣病のリスクを高める肥満の予防に関連して、幅広い対象者において、日常生活中の身体活動量の調査が求められている。身体障がい者は、活動様式や活動制限要因は多岐にわたるため、流通している古典的な方法では正確な測定は難しいと考えられる。そこで本研究では、身体活動量評価法のゴールドスタンダードであり、おそらく障がい者に対しては唯一適切に運用が可能と考えられる二重標識水法を用いて、身体障がい者向けのエネルギー必要量ガイドラインの作成を念頭においた広域調査の足がかりをとなるパイロット調査を実施する。 平成20年度においては、調査に向けた調整と準備が中心に行われた。身体障がい者を対象とした活動量調査は、健常者のそれに比べて世界的にも例数が少なく、実施に向けてはその安全性の確保にはじまり、慎重な検討と周到な準備が求められる。取得されるデータの重要性に鑑み、本調査では重度の身体障がい者を対象としても調査を行うため、障がい者自立支援組織の代表者(自らも重度障がい者)と打ち合わせを行い、測定をどのように実現するかについての議論を行った。 身体活動量の指標としては、総工ネルギー消費量を基礎代謝量で除した身体活動レベルが世界的に用いられているため、本調査においても障害を有する対象者が参加しやすい基礎代謝量の測定を模索する必要があった。そこで、同志社大学スポーツ健康科学部棟内に、非拘束下での測定が可能な大型装置、ヒューマン・カロリメーターの設置を行った。また、測定の一部を除き、すでに本学倫理審査委員会による承認手続きを完了している。 なお、二重標識水法については、必要となる安定同位体試薬を入手、調合することで、測定の準備を完了した。供給業者との協議により、安価に同位体が手配できたため、本プロジェクトの対象者数の拡大として、研究結果に反映させることが可能となった。
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