研究概要 |
食事と運動の量的指針を示すため,幅広い対象者において,日常生活中の身体活動量の調査が必要とされている.食事摂取基準に示されるエネルギー必要量において,特に,子どもや高齢者,障がい者においては日本人のデータが不足しており,継続的な調査が求められている.本プロジェクトがメインの対象と見据える身体障がい者は,活動様式や活動制限要因が多岐にわたり,古典的な方法での総エネルギー消費量の評価は困難と考えられ,二重標識水(DLW)法に期待が寄せられる. 本研究のように実生活に根ざした生きたデータが重要な研究においては,対象者は自ずとヒトに限定される.近年の研究倫理の意識の高まりを受け,本プロジェクトで特徴的に用いるDLW法の安全性について改めて文献的に検討を行った.WHO, IAEAなど信頼ある機関での取り扱い,ならびに実用濃度におけるリスクの検討から,2010年時点において,利用の障害となる明確なリスクはないことが確認された. エネルギー必要量は,基礎代謝量と身体活動レベル(PAL)の積で求められる.DLW法により求められたPALに限定して,日本ならびにライフスタイルが近いと判断できる先進諸国のデータに限定して,推定エネルギー必要量算出の根拠となるシステマティックレビューを行った.本レビューの結果は,日本人の食事摂取基準2010年版にも反映されている. 活動性の高い子どもの総エネルギー消費量について,DLW法ならびに加速度計(アクティマーカー)を用いて測定を行い,自律神経機能指標との関係性も検討した.中強度活動の従事時間は副交感神経活動と正の相関を示した.本研究では基礎代謝量の実測も試みたが,結果として良質なデータを得ることはできなかった.身体障がい者を対象とした測定を後に控え,環境統制,測定システム,スケジューリングなどのあり方について意義深い経験と知見を得ることができた.
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