研究概要 |
健康なエネルギーバランス維持の指針として,厚生労働省の策定する日本人の食事摂取基準におけるエネルギー必要量は重要である.しかし,その算定根拠となるエビデンスは必ずしも盤石ではなく,技術的な困難さなどから,子どもや身体障がい者においては依然として重点的な調査が必要な状態にある.本研究は,この課題に対するアプローチである今後の大規模調査に向けた準備として,身体障がい者を対象に既存法の運用に関する知見を得ることを念頭に,複数の切り口で身体活動量調査を実施した. 【主な研究成果】 1.安定同位体分析システムの確立 二重標識水(DLW)法は,付随して発生する同位体試料分析の難易度が高く,これを行える分析拠点の立ち上げが今後の需要に照らして重要である.そこで本プロジェクトの一環として,福岡大学身体活動研究所への新型IRMSの導入を支援した.この取り組みにより高精度短時間解析が可能となった. 2.障がい者を対象とした測定 身体障がい者8名のヒアリング協力を得て,従来の測定手続に改善を加えながら総エネルギー消費量(TEE)ならびに基礎代謝量(BMR)の同時測定を実施した.ヒューマンカロリメーターによるBMR測定は相対的に負担が軽く,DLW法については試料を尿に限定せず唾液とする柔軟性が重要なことなど多くの知見を得た. 3.障がい児を対象とした身体活動量調査 大阪府立母子保健総合医療センターとの共同研究として,低身長児7名のDLW法によるTEEとフード法によるBMRの評価を行った.当該児においては,身体活動レベルは健常児と変わらないにも係わらず,BMRが体重から推定される値より有意に高く,これを受けTEEについても高い傾向,即ち代謝亢進が認められた.
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