メタボリックシンドロームは、長期にわたる食生活の影響により、生体での栄養素の恒常性が破綻することで発症する。その治療や予防に対する栄養成分として、キシリトールやパラチノースなどの糖質が効果を有することをこれまでに見いだしているが、詳細なメカニズムおよびヒトへの応用・作用については不明である。前年度、動物へのキシリトール投与試験において、内臓脂肪の蓄積抑制および褐色脂肪細胞での脂肪酸酸化、熱産生亢進に寄与する遺伝子発現の上昇が観察された。そこで、本年度は、キシリトール摂取による熱産生および基質燃焼の増強効果について、ヒトで同様の効果が観察されるかを検証することを目的とし、間接熱量計を用いた熱産生および脂質燃焼効果について検討を行った。健常人を対象とし、キシリトールを10g含んだ飲料水を投与し、エネルギー消費および脂質酸化量をリアルタイムに計測した結果、投与後15分後に、脂質酸化量が僅かに上昇することが観察された。また興味深いことにその効果は3~5分間程度持続していた。濃度依存性などを検討する必要はあるが、ヒトに対してキシリトールの投与量を増やすことが難しいため、今後の検討課題として、その対応策および他の成分との組み合わせ効果について評価を行う必要がある。したがって、キシリトールは、ヒトに対しても脂肪酸酸化、熱産生亢進を誘導し、肥満やメタボリックシンドロームの予防および治療に有用である可能性が示唆された。しかしながら、詳細な作用機序は不明であることから更なる検討が必要と考えられる。
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