(目的)近年、廃用性筋萎縮の発症・進行に酸化ストレスが関与するという報告が相次いでいるが、酸化ストレスがどのようにして、筋萎縮という表現系を引き起こしているかは不明である。我々はレドックスキナーゼとして知られているProtein kinase C delta(PKCδ)が、不活動により生じた酸化ストレスと筋萎縮という表現系を結びつけているメディエーターであると仮説し、検証を行った。 (対象及び方法)本年度は、PKCδのノックアウトマウスを用いて、廃用性筋萎縮におけるPKCδの関与を十分な数を用いて検討した。PKCδノックアウトマウスに後肢懸垂を1日から14日施し、筋の湿重量を測定した。また、筋萎縮時に発現が増加することが知られているE3ユビキチンリガーゼであるMAFbx、MuRF1の発現量をrealtime PCRにて測定した。さらに、肥大・萎縮に関与しているシグナル(Akt-mTOR、p38、JNK等)に関しても検討を加えた。 (結果)WTに比べ、KOのヒラメ筋は10%ほど小さかった。後肢懸垂により、WT、KOともにヒラメ筋、足底筋、腓腹筋は同様に萎縮した。萎縮率で考えるとKOのヒラメ筋は、WTのヒラメ筋の萎縮率よりも小さかった。また、MAFbx、MuRF1はWT、KOともに同様に増加した。また、肥大・萎縮のシグナルも、WT、KO間に差は認められなかった。 (考察)PKCδは平常時のヒラメ筋のサイズ調節に関与する可能性は示唆されたが、廃用性筋萎縮においては、今後の検討が必要と考えられた。
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