脂肪細胞から分泌されるレプチンは、視床下部にはたらき、食欲を抑制するとともに、生体の活動量を増加させる等、エネルギー消費量を増加させる機能を持つ。また、脂肪細胞の増加にともないレプチンの放出量は増加するため、レプチンは生体内に蓄積されたエネルギー(脂肪)量を調節する役割も担うと考えられている。一方、視床下部でのレプチン感受性の低下は、過食とそれにともなう肥満を誘発すると言われている。平成20年度は、このレプチン感受性低下が運動によって予防・改善できるか否かを、脳室投与の手法を用いて検討した。 まず、健常のWistar系ラットを用い、一過性の走行運動群(20m/分で6時間)と、非運動群とでレプチン感受性の変化を比較した。運動の効果によるレプチン感受性の変化は、レプチン脳室投与後の摂食量で判定した。その結果、両群の摂食量に統計学的な有意差は検出されず、この実験条件でレプチン感受性は上昇しないと推察された。 続いて、先天的に過食し肥満を呈する遺伝性肥満ラット(OLETFラット)に対し、1日90分で2週間にわたる継続的な走行運動を負荷した。この時の走行速度は、乳酸性作業閾値(LT : ヒトの場合、ジョギングに相当)となる20m/分とした。なおLTは、速度を漸増して走行させたOLETFラットの血中乳酸値を経時的に測定し決定した。 2週間の運動終了直後、運動群および非運動群にレプチンの脳室投与をおこない、投与後の摂食量および活動量から、レプチン感受性の変化を判定した。その結果、運動群・非運動群間で統計学的有意差は認められず、この実験の運動条件はレプチン感受性に影響しないと推察された。 以上の実験から、運動によるレプチン感受性の変化に統計学的な有意差はなかったが、レプチンを脳室投与した場合の摂食量は、非運動群に比べ運動群が少ない傾向であったため、今後は新たな運動条件下での検討が必要と考えられた。
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