本研究では、ss3アドレナリン受容体(AR)遺伝子変異を保有する小児と保有しない小児との間で、メタボリックシンドロームの因子である内臓脂肪型肥満、脂質代謝、糖質代謝、血圧性状を比較し、小児におけるメタボリックシンドローム(MS)の発生に、ss3AR遺伝子変異の保有が関与するか否かを明らかにすることを目的とした。7〜12歳の男女小児13名(平均年齢8.9±0.8歳)を対象に、ss3AR遺伝子、肥満度、空気置換法による体脂肪率、MRIによる内臓脂肪面積、血圧、血清脂質、動脈硬化指数、血糖値、インスリンなどを解析・検査した。平成17〜19年度に測定を行った67名を加えて分析すると、ss3AR遺伝子の変異型を保有する肥満小児群は13名、正常型を保有する肥満小児群は30名、変異型を保有する非肥満小児群は5名、正常型を保有する非肥満小児群は31名であった。ss3AR遺伝子の変異型を保有する割合は、非肥満小児(13.5%)に比べて肥満小児(30.2%)の方が有意に高いことから、ss3AR遺伝子の変異型が小児の肥満に大きく関与することが示唆された。また、MSと判定された小児は、全対象者80名中に4名(9.3%)認められ、ss3AR遺伝子の変異型を保有する肥満小児群13名中に3名、正常型を保有する肥満小児群30名に1名に分布した。この2群間でMSの合併率を比較すると、正常型を保有する肥満小児群(3.3%)に比べて変異型を保有する肥満小児群(23.1%)の方が有意に高かった。また、肥満小児について変異型と正常型の間で検査項目を比較すると、正常型を保有する肥満小児に比べて、変異型をもつ肥満小児では肥満度、体脂肪率、内臓脂肪面積が顕著に大きく、HDLコレステロールが顕著に低い値を示した。以上から、ss3AR遺伝子の変異型は小児におけるMSの発生に少なからず関与している可能性が示唆された。
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