研究概要 |
本研究は,メタボリックシンドローム改善のための運動・食事習慣の行動変容を規定する遺伝子多型を同定し,遺伝的素因に基づくテーラーメイド運動・栄養指導法についての学術的基礎開発を構築することを目的とした。30-65歳を対象に運動指導による介入前後の運動行動変容(加速度計による身体活動量の評価)の評価により,運動行動変容が生じた者と運動行動変容が生じなかった者に分類した結果,運動行動変容群は19名,運動行動変容なし群は13名であった。運動行動変容に関連する遺伝子多型の網羅的解析を実施するため,すべての被験者から採取した血液からDNAを抽出した後,DNAとgene chip(illumina社製Human660W-Quad Bead Chip)を用いて550,000個の遺伝子多型を網羅的に解析した。その結果,case-control解析においてp<0.0001であったSNPが5箇所検出された。これらには,免疫系に関する遺伝子のSNPが含まれていた。また,身体活動量が1年を通じて多い者,少ない者,および運動指導介入により運動行動変容が大きかった者,小さかった者,計112名を抽出し,同様にgene chipにより解析した結果,case-control解析においてp<0.0001であったSNPが16箇所検出された。これらには,大脳における軸索誘導やイオンチャンネルに関する遺伝子におけるSNPが含まれており,それら遺伝子が運動行動変容に影響を及ぼしている可能性が推測された。今後2段階絞り込み法により,今回検出されたSNPについて,より多くのサンプル数での検討を行う予定である。
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