私は前回の研究で、「尾部懸垂解除後の異なる運動形式が骨梁構造劣化の回復に及ぼす影響」を検討し、ジャンプ運動の方が、ランニング運動よりも尾部懸垂後の骨委縮の回復に有効であることを示した。さらに、「尾部懸垂による骨微細構造に対する運動負荷と薬物投与(アレンドロネート(ALN)と副甲状腺ホルモン(PTH))の治療効果」を検討し、薬物投与と運動負荷は異なった機序で骨梁構造の劣化を回復することが考えられ、相乗効果が期待された。したがって、骨粗霧症治療薬と運動負荷との間には相乗効果が予想され、今回は、運動負荷と薬物投与の併用による骨梁構造の相乗効果の有無を検討した。生後8週齢のWistar系雄性ラットを安静群、ジャンプ運動群、PTH投与群、ALN投与群、PTH+ジャンプ運動群、およびALN+ジャンプ運動群の6群に分けた。PTH投与群にはhuman PTH(1-34)を投与(60μg/kg/day)、ALN群にはALNを投与(20μg/kg/day)し、ジャンプ運動は、1日10回のジャンプ運動を行わせた。実験終了後、大腿骨遠位骨幹端領域の骨梁微細構造および骨幹部の幾何学的特性を、マイクロCTにより解析した。次いで、3点支持の破断試験を行って骨強度を測定した。その結果、ジャンプ運動とPTH投与は、主として骨梁の厚さに寄与しているのに対して、ALNは骨梁数の増加に寄与して骨梁構造を変化させることが示唆された。また、皮質骨の幾何学特性と骨強度はジャンプ運動により増加したが、薬物投与の効果は少ないことが示唆された。しかし、運動と薬物投与を併用した場合は、骨梁構造および骨強度に相乗効果がみられた。以上の結果より、薬物投与とジャンプ運動は、骨量増加や構造的な増強に有効であることが示された。また、薬物投与とジャンプ運動との併用は、大腿骨遠位骨幹端領域の骨梁微細構造に相乗効果を生み出すことが示された。
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