研究概要 |
前度に引き続き同様の方法で代謝性疾患者の横断調査を実施し、合計で男女85名の測定を完了した。本年度は、昨年度得られた知見に基づき短時間の断続的な身体活動を非運動性身体活動と定義し、疾病を呈する者と同等に肥満であっても疾病を呈さない者の日常身体活動パタニンの違いを特に中等度身体活動の頻度ならびに活動一回あたりの持続時間の観点から検討した。内臓肥満と判定された女性38名(56±10歳,腹囲98.5±12.4cm)を抽出し分析の対象とした。このうち19名は、動脈硬化性疾患予防ガイドラインに基づき脂質異常症と診断された(DOB群)。他の19名は当該疾患を有さず関連する服薬もなかった(OB群)。一日の中等度活動時間はOB、DOB群で有意な差は認められなかった(24.9±12.7 vs 19.8±10.2分/日,p=0.18)。両群ともに、10分以上持続する中等度活動の頻度はごく僅かであり(0.05±0.12 vs 0.02±0.05回/日)、4-8、8-16、16-32秒といった短時間の活動が高頻度で観測された(115.0±50.9 vs 107.1±42.9回/日)。一方、OB群の3-5分間持続する活動は、DOB群に比して多い傾向にあり(0.61±0.31 vs 0.31±0.13回,p=0.055)、5-10の活動は有意に多かった(0,42±0.52 vs 0.08±0.11回,p<0.01)。このように、肥満であっても脂質異常症を呈する者とそうでない者では3分以上10分未満の中等度活動の頻度に差があることが明らかとなり、このような比較的短時間かつ断続的な身体活動が疾病予防のキーとなる可能性が示唆された。次年度は、介入調査において、介入前後の体力・形態および臨床検査の結果にて効果を判定し、身体活動のパターンの観点から効果の差異を検討する予定である。
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