研究概要 |
本研究では、一塩基多型を用いた大規模なケースコントロール関連解析により同定された2型糖尿病関連遺伝子wingless-type mammary tumor virus integration-site family member 5B (WNT5B)のインスリン分泌に対する影響について検討を行った。10週齢C57BL/6Jマウス♂より単離したラ氏島を用いてWNT受容体である七回膜貫通型受容体Frizzled(Fzd)ファミリーの遺伝子発現について検討したところ、Fzd4, 5, 8の発現が認められた。さらにLacZアデノウィルスを用いて単離ラ氏島への遺伝子導入条件の至適化を行ったところ、20-200MOIのLacZアデノウィルス感染によりβ細胞の約20-70%にLacZ発現が認められた。さらに、Wnt5Bアデノウイルスを用いた単離ラ氏島への遺伝子導入ではウィルス力価に比例したWnt5B遺伝子の発現上昇が認められた。Wnt5Bを過剰発現した単離ラ氏島を用い、インスリンの基礎分泌、グルコース誘導性インスリン分泌に対する影響を解析した。Wnt5B過剰発現によりインスリンの基礎分泌量、ならびにグルコース誘導性インスリン分泌量が上昇する傾向を認めたが、インスリン含量に明らかな差は認められなかった。これらの結果より、Wnt5Bはインスリン発現よりも、むしろインスリン分泌を調節することにより2型糖尿病の発症に関与する可能性が考えられる。
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