本研究は、先進国においても生活時間調査のミクロデータが公開されている国は数カ国にとどまる中で、インド政府生活時間調査のミクロデータを分析し、その結果を用いて、これまでに比較研究されていない南アジア地域であるインドを含めた生活時間調査の国際比較を行うものである。比較対象の国はインドの他、日本、韓国、タイ、カンボジア、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国であり、比較データは、各国の政府レベルで実施された生活時間調査の結果を用いた。 まず、データの特性条件を統一するため最もベーシックなデータを用いることとし、週の全体平均で、各行動分類別の男女別1日の総平均時間のデータを比較対象データとした。このデータを基にして、横断的比較のためにデータを調整する枠組みである「新4大生活時間分類」を用いて6カ国(タイを除く)の生活時間比較を行った。また、男性と女性の平等度の指標ERTU(Equality Ratios in Time Use)を用いて7カ国比較を行った。 インドの生活時間の特徴としては、女性の家事に相当する「世帯維持、管理、買い物」の時間が長く、6カ国中においても最も長い。またこの項目は、ERTUにおいても男女差が大きい韓国(8.0)よりも大きく(8.3)、他国に比べ就業に関する項目のERTU値が低いことから7カ国の中でも性役割分業が顕著である。 インド生活時間のミクロデータは、ユーザがデータを解読するための資料がなく、インド政府の統計担当者と資料の送付や電子メールでのやり取りを重ね、当初の研究計画以上にミクロデータの解析に時間を費やした。そのため、今回はインドの都市部を中心とした州のデータの分析に留まった。地方の州のデータ分析を今後の課題としたい。
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