本研究では、要介護高齢者がその人らしい生活を送るためには、「役割感・生きる意欲を抱くこと」「地域社会との双方向の関係性が築かれること」が重要であり、その実現のためにはサポートが必要であると考えている。 平成21年度は、要介護高齢者のケアを、命をつなぐ「身体ケア」と暮らしをつなぐ「生活を支えるケア」だけではなく、「関係性を支えるケア」も含めて捉えることによってその人らしい生活の実現につながると考え、介護事業所を対象に調査研究を進めた。まず、高齢者・事業所・家族の「関係性を支えるケア」を実践するためには、(1)居宅生活にこだわるサポート、(2)家族関係に働きかけるサポート、(3)家族の安心感を得るサポート、を目指す必要があり、サボートの具体的な方策として、(1)ニーズの多様性に応えるケア、(2)つなげるケア、(3)介入をやめるケア、(4)家族に余力を残すケア、がある。(1)~(4)は有機的に絡み合い、高齢者・事業所・家族の関係性が築かれることを明らかにした。次に、高齢者・地域の「関係性を支えるケア」を実践するためには、事業所が地域と接点を持つ必要がある。事業所と地域がつながることで、地域が事業所のことを受け入れ、事業所は地域の課題やニーズを知るという「相互理解」の関係ができ、相互理解の延長線上に、地域で一緒に暮らす者同士助け合うのが当たり前という「相互扶助」の関係が築かれることを明らかにした。 これまでの研究活動から、介護事業所が、高齢者だけではなくその周辺の人や環境も含めて関わることによって、「役割(生きる意欲)」「高齢者と地域の関係性」「その人らしく生きること」につながることがわかった。平成22年度は、介護事業所と地域の相互扶助の関係性の上に成り立つフォーマルケアとインフォーマルケアの相互機能について追究し、要介護高齢者と地域が持続的な相互関係を築く方策を考える。
|