阪神・淡路大震災における人的被害調査によると、建物被害が軽微な堅牢建物でも家具による骨盤や大腿骨の骨折が発生していたことが明らかとなっている。本課題では、地震時の住宅内における典型的な負傷発生要因として、転倒家具による大腿骨骨折の定量的評評価手法の開発を行った。 22年度は、長周期地震動による集合住宅の屋内被害を想定し、一般的に一室に家具および寝具が設置されている、ワンルームマンション居住者に対してアンケート調査を実施した。その結果、室面積が狭小なため家具の設置個数が少なく、家具による直接的な人的被害は少ないが、避難経路の遮断が問題となる可能性が明らかになった。次にこの調査結果を受け、ワンルームマンションでの典型的な間取り・家具配置パターンを近似した状況をコンピュータシミュレーションによって再現した。家具の配置パターンによって変化する地震後の屋内被災状況を確認した。 21年度より継続している、大腿部モデルによる実験に関しては、22年度は新たに荷重計(ロードセル)を導入した。これにより、従来は計算で求めていた直接大腿部へ載荷される家具重量の値を、実験的に求めることが可能になった。加速度センサーは大腿部モデル内に設置、圧力センサーは衝突体(家具)表面に設置し、タンス転倒実験を実施した。タンス単体で36kg、タンス+衣料で48kg、タンス+衣料+おもりで58kgの三種の条件とした。2種のセンサーからのデータにより評価の信頼性が向上できたと考えられる。
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