現代人にとって深刻な花粉症に要する衛生マスクに着目し、その機能性と装着感の改質、改善策を見出し、さらには各個人に最適な衛生マスクを開発することを、本研究の長期的な目的としている。本課題において、平成20年度では、衛生マスクに対する問題点の調査を行い、マスク使用状況と問題点に関する知見を得た。また、フィット性能の計測結果および前年度までに行った熱特性の測定結果をもとに、マスクと顔面の間に形成される隙間に着目し、花粉捕集効率の計測システムの試作を行った。試作したシステムについて、最適な実験条件を、詳細に検討した。さらに、今後、実験試料として採用していく花粉症用マスクの通気性能、厚さについて、KESを用いて測定を行った。 マスクに対する意識調査を実施した結果、花粉症有症者は42.1%であった。また、全回答者のうち、マスクを着用する者は11.5%であった。マスクに対する問題点については、「メガネが曇る」、「蒸れる」、「息苦しい」といったものであり、マスクの吸湿特性や水吸着特性さらには通気性に起因する問題点が挙げられた。 花粉捕集効率計測システムの試作において、システム構成および実験条件を検討した。その構成内容は、黒色に塗装したヘッドマネキン、ビニルチューブ、白煙管(塩化第二スズ)、エアーポンプ(33I/s)、DVC(30コマ/s)、ハロゲン電球(25W)である。これらの装置を、内部を別珍で、外部を遮光カーテンで被覆した空間内に設置した。計測では、試料マスクを装着したマネキンの口部から漏出する白煙を、ビデオカメラを用いて観測した。以上のシステムを用いて観測した白煙は、体内に取込まれる花粉に相当することを仮定している。 次年度以降、試作した計測システムを用い、本年度に一般性能を測定した試料マスクについて、顔面形状や使用特性に応じた花粉捕集効率を計測していく予定である。
|