研究概要 |
現代人にとって深刻な花粉症に要する衛生用マスクに着目し,その機能性と装着感の改善策を見出し,さらには各個人に最適な衛生用マスクを開発することを,本研究の長期的な目的としている. 本年度では,全国の大学生(男性715名,女性804名)を調査対象とした「衛生マスクに対する問題点の調査」について,詳細に解析した.その結果,有効回答者のうち花粉症有症者数は男性36.5%,女性44.0%であった.有症者を対象とし,対策方法を調査した結果,マスクを着用するという回答者数(男性43.7%、女性54.0%)が最も多く,マスクの着用は対症療法として有用であることが推察される結果を得た.さらに,マスク着用時における問題点について,女性では「化粧が落ちる」と述べた回答者が最も多く,男性と女性とでは異なる問題点を抱いていることが本調査により明らかとなった.男女共通の問題点として,「蒸れる」,「眼鏡が曇る」,「息苦しい」といった回答が得られた.以上の結果から,花粉症用マスクの機能性と装着感を改善するためには,マスク装着時において呼吸をする際の吸気だけでなく呼気についても検討する必要があることが考察された. また,機能性の改善策を見出すために,主に暗室,照明ランプ,ビデオカメラ,ヘッドマネキンから構成される簡易型気流観測システムを試作した.本システムを用い,マスクを装着したヘッドマネキン口部から吐出される白煙の漏れ状況を観測した.その結果,マスクの種類およびマスクの設置箇所すなわち着用位置により,白煙の漏れ状況が異なることが実験的に明らかとなった.本課題を遂行することにより,花粉捕集効率の向上すなわち隙間の縮小と装着感に関する問題点を改善した製品開発において,隙間形成箇所を簡便に可視化することができる有用なシステムを提案できた.
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