アレルギーに対して抑制効果を有する食品由来の成分として、脱顆粒抑制効果を指標に「黒大豆種皮エキス」に抗アレルギー作用を認めている。既にその作用成分として、シアニジン-3-グルコシド(C3G)を同定しているが、その他に強い効果を示す物質Xの存在を認めている。そこで、前年度、エキスより単離した成分Xを同定することを目的とした。次いで、作用成分の熱やpH安定性を検討したのち、黒大豆を日常摂取することを前提として黒大豆を調理し、調理操作に伴う作用成分の量的変動とそのアレルギー抑制効果への影響を検討した。 1. 作用成分Xの同定:培養細胞RBL-2H3による脱顆粒抑制効果を指標にSephadex LH-20およびODSカラムにより単離した有効成分Xは、酸性ブタノール処理によりシアニジンを生成したことからプロシアニジンと同定した。 2. 抗アレルギー作用成分(C3G・プロシアニジン)の熱・pH安定性:C3Gは中性下における加熱やアルカリ性下において不安定であり、分解されやすいが、加熱分解産物であるプロトカテキュ酸はC3Gと同等、フロログルシンアルデヒドはより強い効果を示した。一方、プロシアニジンは酸性下では分解しやすいことが明らかになった。 3. 黒豆種皮の抗アレルギー作用に及ぼす調理の影響:黒大豆を用いて通常の鍋と圧力鍋にて煮豆を作成し、加熱方法の違いに加えて、重曹ならびに鉄の存在が黒大豆の抗アレルギー効果ならびに作用物質に与える影響について検討した。その結果、RBL-2H3細胞における脱顆粒抑制効果は、生豆に比較して通常の鍋による加熱において約1.7倍、圧力鍋で1.4倍に上昇した。さらに重曹の存在下でその効果が高いことが示された。C3Gはいずれの調理操作においても未検出であり、C3Gの分解産物であるプロトカテキュ酸ならびにフロログルシンアルデヒドが増加した。 以上の事実より、黒大豆は加熱調理において主要な抗アレルギー成分の一つであるC3Gは分解されるが、その分解物のプロトカテキュ酸ならびにフロログルシンアルデヒドにより抗アレルギー効果は増強されることが明らかになった。本研究の成果は、黒大豆の抗アレルギー作用は、加熱後に増強され、その効果は生大豆に含まれる有効成分の調理による分解産物に起因することを明らかにしたものであり、さらに、黒大豆を日常の食生活で摂取する形態において効果的に利用できることを示すものである。
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