非熟練者が同じ手順、同じ作業で調理しても、熟練者とおいしさに差が現れるのは、調理作業以外に熟練者のみが持つ何かしらの技術が要因となり、料理に影響を及ぼすためと考えた。そこで要因の一つとして、様々な調理の状態、事柄を把握する目の動きに着目し、目配りと出来上がりの相関を調べ、調理技術の新たな指標として有効であることを提示するとともに、目配りの自動評価システムの構築および有効性の確認を行った。 1. 調理技術の新たな指標としての目配り 目配りと調理技術の関係を調査するために、基本的な調理作業「妙める(きんぴらごぼう)」において目配りがおいしさに影響するポイントを、加熱時のフライパンの温度測定やごぼうの滞留時間から特定した。また調理技術と出来上がりとの関連を調べるために、既に構築済みである品質評価技術(硬さ測定、塩分濃度測定)を用いて、おいしさの指標の検出方法を決定した。さらに調理工程が異なる出来上がりに対して官能検査を行うことで、調理技術を表す指標を求めた。 また別の調理作業「練る(ごま豆腐)」においても、品質評価技術(硬さ測定、糊化度測定)を用いて、おいしさの指標の検出方法を決定した。 2. 目配りの自動評価システムの構築 調理時の目配りを検出するために、小型カメラとLED照明を用いて頭部搭載用撮影装置を開発し、撮影・計算用コンピュータを用いて、視線や視覚情報を計算し、視点検出手法を確立した。そして実際の調理内容を撮影し、視点検出結果と調理内容撮影データから、視点の動きを追うことで目配りの検出を実現した。また調理時の大きな動作による視点検出誤差を軽減するために、システムの小型化を実施した。
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