研究課題
本研究課題の目的である輝度ヒストグラム情報が野菜の視覚的な鮮度判断に及ぼす影響の解明を、キャベツを用いた実験から明らかにした。まず、キャベツが温度と湿度が一定に保たれた部屋の中で時間経過に伴って劣化していく過程をデジタルカメラで撮影し(1〜32時間)、それらの画像を実験材料とした。まず、人間が視覚的情報から鮮度判断が行えるかどうかを確認するために、各画像に対する鮮度評定課題を6名の実験参加者に行った(実験1)。その結果、実験参加者は撮影時間の関数として鮮度を低く評定した。この結果より、実験参加者は視覚情報からも鮮度を知覚できていることが明らかとなった。次に、画像の輝度ヒストグラム情報が鮮度知覚に及ぼす影響を検討するために、画像間で輝度ヒストグラムのスワッピングを行った画像を作成した。時間経過の短い(新しい)キャベツの画像に、それ以降の時間経過の(より古い)キャベツの輝度ヒストグラム情報を貼り付けた合成画像をそれぞれ作成し、この合成画像について鮮度評定課題を行わせた(実験2)。実験1と同一の6名の実験参加者が実験に参加した。実験の結果、とくに撮影6時間程度までの範囲において、古い輝度ヒストグラムを貼り付けた合成画像の鮮度がオリジナル画像よりも低く評定された。この結果より、輝度ヒストグラム情報が視覚的な鮮度知覚に影響していることが示唆された。一方で、撮影6時間以降ではその傾向が弱まった。これには、キャベツは時間経過に伴ってシワが増えるなどの形態的変化があるので、そのような手がかりの影響の方が強かった可能性がある。そこで、次年度は劣化に伴う形態的変化がより少ないと思われるイチゴなどを刺激として同様の実験を行い、輝度ヒストグラム情報が鮮度知覚及ぼす影響について体系的に検討する。
すべて 2009 2008
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Appetite 52
ページ: 51-54