研究概要 |
これまでの研究結果から、クジラミンチ肉に他種タンパク質(乳清、大豆、卵白タンパク質)を添加することにより、保水性の向上などが期待されることが示唆された。そこで、本研究ではその他のタンパク質として小麦グルテンを、タンパク質以外の添加物としてコーンスターチを添加した場合に形成されるゲルの特徴を調べ、これまでの結果とあわせて検討した。水分含量85%の鯨ミンチ肉重量に対して添加物量が0,1,3,5%の場合、小麦グルテン、コーンスターチともに添加量増加に伴う破断荷重の上昇は乳清、大豆、卵白タンパク質添加の場合に比べて僅かであり、破断歪率の変化もほとんど見られなかった。離水率は添加物無しの場合約8%であり、添加量の増加に伴って減少した。コーンスターチ5%添加においては離水率が約1%となり、最も離水率が低かった卵白タンパク質とほぼ同じ値を示した。また折り曲げ試験の結果から、タンパク質添加量の増加に伴うしなやかさの低下が見られたが、コーンスターチでは見られなかった。以上の結果から添加物を加えると離水率の低下による保水性の向上は見られるが、ゲルのしなやかさが低下する事が示された。そこでタンパク質の架橋活性を持ち、しなやかさ等の向上の目的で使用されている市販食品添加物のトランスグルタミナーゼ(以下TGase)を各種添加物を加えたゲルに添加し、同様の実験を行った。その結果、いずれの食品タンパク質を添加した場合においてもTGase無添加の場合と比べ、折り曲げ試験結果に大幅な改善が認められ、破断荷重および破断歪み率も無添加の時よりも高い値を示した。 示差走査熱量計(DSC)による熱分析も行った。鯨ミンチ肉のみでは71℃付近に吸熱ピークが見られたが、各種添加物の添加や塩ずり工程によってピークが小さくなるとともにプロードになり、添加物の影響を詳しく解析することができなかった。今後は測定条件等のさらなる検討が必要である。
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