エンドセリン1(ET-1)は主に血管内皮細胞で産生される生理活性ペプチドであり、強力な血管収縮作用を有することから、高血圧症などの心血管疾患の病態との関わりが注目されている。また、高血圧に起因する慢性腎臓病(CKD)の併発は、重篤な心血管イベント発症リスクを高めることから、CKDの予防対策が世界的に注目されている。本研究では、高血圧及び関連疾患のリスク保有者を特定し、早期からの効果的な栄養管理の実現を目指すため、日本人高血圧患者のET-1関連遺伝子解析を推進し、発症や重症度にかかわる遺伝子多型を解析した。【高血圧性慢性腎不全発症に関わるET-1関連遺伝子多型の探索】本態性高血圧患者を対象として、ET-1関連遺伝子(EDN1、EDN2、EDN3、ECE1、ECE2、EDNRA、EDNRB)内に存在するマイナーアレル頻度が5%以上の一塩基多型について遺伝子型解析を行うと共に、Jaffe法により測定した血清クレアチニン値から推算糸球体濾過量(eGFR)を算出し、これに基づいて対象者のCKDの有無を判定した。関連解析の結果、EDNRA遺伝子のT54204C、G54240A、A57938G多型が本邦高血圧患者のCKD発症と相関を示すことが明らかとなった。EDNRAシグナルを遮断する食品や薬物は高血圧性CKDの予防や治療に有効な可能性がある。【循環器疾患関連遺伝子多型の探索】前年度に引き続き、脳血管障害、心疾患、高血圧等循環器疾患者の臨床データおよび遺伝子多型を解析した。その結果、Catechol-O-methyltransferase遺伝子内の一塩基多型が日本人の血圧変動異常の遺伝的背景となっていることが明らかとなった。また、1型Na^+/Ca^<2+>交換体遺伝子内の一塩基多型は、CKD発症と相関を示すことが明らかとなった。
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