研究概要 |
動脈硬化の新規原因物質の解明にあたり、我々は生理活性脂質であるセラミドに着目し、アポE欠損マウスにコレステロール低下薬を与え、セラミド代謝に及ぼす影響について検討した。そこで今年度はスタチンの一種であるフラバスタチン、また血漿コレステロール低下薬でもあり抗酸化剤としても知られているプロブコール与え、血漿コレステロール減少とセラミドとの関係について検討した。12週間のフラバスタチン投与ではコレステロールの減少率が低かったためか、血漿および肝臓セラミドは未投与群と有意な差がみられなかった。しかしプロブコールは血漿コレステロールの有意な減少とともに血漿セラミドも低下した。したがって、血漿コレステロール増加による動脈硬化発症にセラミドが関与している可能性がある。ただしスタチン系薬剤に関しては血漿コレステロールの顕著な減少がみられる投与量を検討した上で、血漿セラミドとの関係を検討する必要がある。 また動脈硬化発症に効果的な食品成分の探索にあたり、抗酸化や抗がん作用が報告されているプロポリスを用いて実験を行った。アポE欠損マウスにおいて動脈硬化病変の有意な減少はみられなかったが、血漿中性脂肪(TG)の減少がみられた。そこでラットを用いてプロポリスによる脂質改善効果ついて検討した。すると、0.5%のプロポリスを投与したラットでは血漿や肝臓のコレステロールやTGが有意に減少した。そこで、そのメカニズムを解明するため脂質代謝に関わる遺伝子のタンパク質発現を調べたところ、PPARαやSREBP-1に変化がみられ、さらにTGの吸収阻害作用があることが分かった(I.Ichi, J Food Sci, 2009 in press)。 来年度はコレステロール増加に伴うセラミド合成酵素の変化や、その合成経路の阻害剤をアポE欠損マウスに与え動脈硬化に対する有効性について明らかにする。
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