研究課題
我々は以前の研究で、肝炎モデルにおいて、酸化ストレスにより細胞死を引き起こす脂質であるセラミドが血漿中で増加することを明らかにした。今年度は動脈硬化の発症要因である糖尿病において、合併症にセラミドが関与する可能性について動物を用いて検討を行った。6週齢の雄Wistarラットにストレプトゾトシンを腹腔投与し、対照群にはクエン酸緩衝液のみを投与した。それぞれ2、8週間後に測定を行った結果、糖尿病群では2週間後ですでに、血糖値とBUN(血中尿素窒素)が対照群より有意に高く、肝臓、腎臓中のビタミンCは有意に低かった。8週間後、ビタミンC濃度はさらに有意に低下し、血漿中でも有意に低下した。以前、糖尿病ラットにおいて肝臓、腎臓の脂質ヒドロペルオキシドが増加することを報告しているが、今回の結果からも糖尿病の肝臓、腎臓では酸化ストレスが亢進することが明らかとなった。各臓器のセラミドについては、脂質抽出後、LC-MS/MSにて測定を行った。8週間後の肝臓のセラミドは両群で差はみられなかったが、腎臓のセラミド総量は2週間後から対照群より有意に高く、8週間後ではさらに上昇した。血漿中のセラミドは8週間後に有意に上昇した。またセラミドの合成酵素で、血中に存在する分泌型スフィンゴミエリナーゼの活性は2、8週間後に有意に上昇した。以上より、糖尿病では、分泌型スフィンゴミエリナーゼ活性が上昇する結果、血中セラミドが増加し、それが腎臓に蓄積して腎不全等の合併症を引き起こすことが示唆された。
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Medicinal Chemistry Communications
巻: (in press)(掲載確定)
Journal of Health Science
巻: (In press)(掲載確定)
Biological & Pharmaceutical Bulletin
巻: 33 ページ: 707-709