本研究は、体内時計の破綻によるメタボリック症候群発症の分子機構を明確にすることを目的として、メタボリック症候群モデル動物を用い、1)メタボリック症候群の進展に伴って時計遺伝子がどのように変化するか、2)日照サイクルを変化させる、あるいは日照サイクルを無くすと時計遺伝子と栄養代謝遺伝子がどのように変化するか、について検討を行った。 まず、メタボリック症候群の進展に伴う時計遺伝子の発現変化について検討するため、メタボリック症候群が発症する以前の実験動物を若週齢より飼育し、5週、10週、15週、20週の週齢ごとに検討を行った。メタボリック症候群モデル動物の血清の脂質レベルは加齢に伴って上昇する傾向がみられ、正常対照動物に対し有意に高値を示したが、明確な概日リズムはみられなかった。視交叉上核にはCIK、Bmal1、Per、Cry等の時計遺伝子が存在するが、これらの遺伝子の発現量を検討したところ、時計遺伝子CIKの発現量は正常対照動物で暗期に発現が高くなるリズムがあったが、メタボリック症候群モデル動物では振動が見られず、ほぼ一定のリズムを示すなど、メタボリック症候群と正常対照動物との間に相違がみられた。 次に日照サイクルの変動に伴うメタボリック症候群の時計遺伝子の発現変動について解析するため、実験動物の日照サイクルを異なる条件下で飼育して検討を行った。日照サイクルを変化させることにより発現に変動を示す遺伝子がみられ、またメタボリック症候群モデル動物と正常対照動物で異なる振動を示す遺伝子もみられた。
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