研究概要 |
【背景・目的】先に,ペグインターフェロン・リバビリン併用療法を施行するC型慢性肝炎患者に対し,亜鉛とビタミンE・Cの同時投与を行い,低血清亜鉛の改善に伴い血清ALT値が全症例で基準値内に改善することを確認した。一方,慢性肝疾患におけるPUFA不足は,食事摂取量の低下,消化吸収低下,肝生合成の低下,脂質のエネルギー要求量基質としての増加等により引き起こされる。PUFAは細胞膜の流動性や免疫能の維持,PGE2を介した肝細胞保護作用,発癌抑制等を肝疾患に対し有用であることが知られている。脂質栄養状態の是正を目的としたn-3系脂質補給の効果の一方で,亜鉛欠乏状態でのEPA投与は肝臓の脂質過酸化をむしろ増強させることが動物試験において示されている。そこで当該年度においては慢性肝障害モデルに対する亜鉛補給の,抗酸化系,線維化系,肝障害に及ぼす影響を検討した。【方法】コリン欠乏高脂肪(CDHF)食を摂取させたラットに酸化ストレスを与えて肝炎を誘発させ、コントロール群、CDHF食群、肝炎群、亜鉛補充群の比較を行った。【結果】摘出肝ではCDHF食で脂肪肝、肝炎群で肝の炎症が確認された。体重および血清アルブミン値はコントロール群に比べ他群で明らかに低値であり、CDHF食による低栄養状態が伺われた。肝障害指標であるALTはコントロール群<CDHF食群<肝炎群で上昇していたが、AST値の上昇はCDHF食群と肝炎群で差異を認めなかった。【考察】今後、亜鉛補充法の再検討を含めて実験例数を増やし、生化学的、組織学的な詳細な指標によって評価を継続する。
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