研究概要 |
慢性肝疾患に存在する酸化ストレスの亢進は,肝線維化,発癌といった病態進展への関与は様々な先行研究によって示唆されている。本年度は肝炎症抑制効果,線維化抑制効果,窒素代謝改善効果を有する亜鉛の補充に着目し,慢性肝障害モデル,すなわちコリン欠乏高脂肪(CDHF)食を10週間摂取させたラットに薬剤誘発的に慢性的な酸化ストレスを与えて(6週間)肝炎を誘発させ,コントロール群,CDHF食群,肝炎群,亜鉛補充群の比較を行った。体重増加および血清アルブミン値はコントロール群に比し,他の3群で明らかに低値であり,コリン欠乏による栄養障害が確認された。肝障害指標であるALT値は亜鉛補充群で低値傾向を示した。今後、酸化ストレス指標、肝線維化指標、線維化関連遺伝子の発現レベルなどの項目について詳細な解析を進めるとともに、慢性肝疾患で低下しその補充効果が示唆されているエイコサペンタエン酸(EPA)の経口投与を本実験モデルにおいて実施しさらなる検討を行う。 C型慢性肝疾患同様に肝の炎症、線維化を生じる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者に対し、抗酸化ビタミンや脂質代謝改善作用を有するとされるEPAを投与し有用性を検討した。NASH患者は食事指導(Diet群)、抗酸化ビタミン投与(Vit群)、抗酸化ビタミン+EPA投与(EPA群)に割り付け、治療開始時と3ヶ月後で比較検討を行った。観察後、身体計測値のうちBMI、体重減少率がVit群で低下傾向を示したものの、すべての群で食事摂取状況の変化はなかった。血清AST、ALT値はVit群で低下傾向を示した。TNF-αはVit群で低下傾向を示したが、他の群では変化は見られなかった。結果から、NASHにおいて長期的に適正体重を目ざした減量、特に体脂肪率の減少は重要と考えられた。抗酸化ビタミンおよびEPA投与による病態改善効果については長期的な検討が望まれる。
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