研究概要 |
1.脂質の過剰摂取による腸内環境の変化が,脂質代謝異常や大腸疾病に関連していることが指摘されている。そのため,セリシンが高脂肪食摂取ラットの腸内環境に及ぼす影響について検討を加えた。その結果,セリシン摂取による盲腸重量の顕著な増加と盲腸内容物pHの低下が認められた。腸内の発酵産物である有機酸量について検討したところ,高脂肪摂取により盲腸内の酢酸,プロピオン酸,酪酸およびコハク酸量が減少した。一方食餌セリシンは,高脂肪食摂取条件下において,盲腸内の酢酸及び酪酸を有意に増加させることが明らかとなった。また,血清中性脂肪量と盲腸内の酢酸量との間に有意な逆相関関係が認められ,セリシンによる血中脂質低下作用に,腸内での酢酸発酵の増加が関与している可能性が示唆された。盲腸内容物の細菌叢と糞中の二次胆汁酸についてはセリシン摂取による影響は認められなかった。2.腸内環境改善が肝障害の防御につながる可能性があるため,肝障害に及ぼす影響についての検討を行った。高脂肪食摂取条件下でガラクトサミン肝障害を誘発させたラットにおいて,血清ALT,ASTおよびLDH活性は著しく増加した。食餌セリシンは,ガラクトサミン投与による血清ALT活性の増加を有意に低下させ,血中ASTおよびLDH活性を低下させる傾向を示した。以上の結果より,セリシンは高脂肪食条件下で盲腸内の有機酸発酵を増加させることにより腸内環境を改善し,脂質代謝の改善や肝障害の抑制に関与する可能性が示された。
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