骨粗霧症の予防には、若年期に最大骨量(ピーク・ボーン・マス)をできるだけ高めておくことが重要である。骨量は、一塩基多型(SNP)などの遺伝因子と食生活などの環境因子の相互作用によって決定される。近年の研究から、骨粗鬆症の発症リスクが高い遺伝子タイプを持っていても、食生活を改善することで骨代謝を改善できる可能性が示されている。つまり、遺伝子タイプ別の栄養教育により食生活の改善へ導くことで、将来の骨粗霧症予防できるのではないかと考えられるようになってきた。アルカリホスファターゼ(ALP)は、リン酸エステルを無機リン酸とアルコールに加水分解する反応を触媒する酵素で、骨組織に存在する臓器非特異型ALP(TNSALP)は、石灰化との関連が深い。TNSALP遺伝子の787T>C(Tyr246His)多型が機能的SNPであり、その骨密度への影響は、加齢により顕著になることが報告され、骨粗鬆症の発症において重要な遺伝子であることを示されている。そこで本研究では、若年者への骨粗鬆症予防のための遺伝子多型にあわせた栄養教育のためのデータを得るために、TNSALP遺伝子多型787T>C(Tyr246His)と骨代謝マーカーおよび栄養摂取状況の関連について検討を進めた。 20歳代男性および女性を対象とした。食生活および生活状況調査は自記式調査票を用いて調査し、栄養素等摂取状況の把握は3日間の食事記録を用いた。身長、体重、体脂肪率を測定し、超音波骨量測定器を用いて右足踵の骨量測定を行った。また、血清カルシウム、リン値を測定し、骨型アルカリホスファターゼ(BAP)、オステオカルシンなどの骨代謝マーカーを測定した。さらに、TNSALP787T>C遺伝子多型のタイピングなどを行った。今後、TNSALP787T>C遺伝子多型のTT型、TC型、CC型のそれぞれのタイプごとに、栄養素摂取状況と血清リン値やBAP値などの骨代謝との関連についてさらに詳しく解析を進めていく。
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