若年者の朝食欠食率が増加しているが、欠食が精神活動時の身体へ及ぼす影響に関する情報が不足しているため、電気生理的手法による生理実験と得られた結果を用いた食育を実施した。 早朝(8:00-9:30)と昼前(11:00-12:30)に、近赤外線酸素モニタ(NIRS)および自動血圧心電計、代謝測定器を用いて、朝食摂取の有無と精神活動(暗算)前後の脳血流および循環機能の影響を調べた。朝食常欠食者(大学生20名)は朝食常摂取者(大学生20名)よりも、昼前で前頭前野の総ヘモグロビン(tHb:酸化Hb+還元Hb)と還元Hbの上昇度が有意に低く、交感神経活性の上昇度は有意に高く、暗算の正解率は有意に低下した。血糖値は早朝昼前共に欠食者は常摂取者よりも有意に低かった。朝食常食者(大学生18名)の欠食日は摂取日よりも、早朝で還元Hbの上昇度が有意に低く、組織酸素化指標(TOI:酸化Hb/(酸化Hb+還元Hb)×100%)と交感神経活性の上昇度と血糖値は有意に高かった。昼前では暗算の達成数は有意に低下した。朝食常食者の生徒(中学生15名)と成人(大学生15名)の比較では、両群共に欠食日は摂取日よりも、早朝の暗算前後の副交感神経活性や、TOIの上昇度が有意に高く、昼前の回答数は有意に低下した。早朝でTOIの安静値は生徒が成人よりも高く、暗算による上昇度は成人が生徒よりも有意に高かった。生徒は早朝も昼前も欠食日で正解率が有意に低下し、交感神経活性は有意に上昇した。 生徒(中学生70名、小学生31名)を対象にした食育の授業で、簡易生理指標を測定した。欠食日は摂取日よりも登校時のフリッカー値が有意に低く、昼前の精神活動前後での唾液アミラーゼ値は有意に上昇し、気分尺度のPOMSやVASも、欠食日と摂食日で有意差がみられた。また本授業受講者(中学生36名)は、未受講者(中学生35名)よりも、3カ月後に実施した共通の食育授業における記述式の質問課題の回答率、回答語句数、授業内で学習した語句を活用した者の数が有意に高かった。
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