研究概要 |
我が国ではライフスタイルの変化によって食生活が多様化し, その結果不足してしまう栄養素を補う目的で, 健康食品やサプリメント等の需要が急速に高まっている. 一方, 妊娠中の母体は, 自身の体調維持のみならず, 胎児の正常な発育を促すために, 非妊娠時とは生理的・生化学的に異なった状態となる. そこで, 鉄, カルシウム, 亜鉛, 銅, マグネシウムといった必須微量元素の栄養状態が, 母体と胎児を結ぶ胎盤の機能にどのような影響を及ぼすのかを調べ, 妊娠時の栄養状態, ひいては現在の食生活が, 母体および胎児にどのような影響を及ぼすのかを調べることを本研究の目的とする. 平成20年度は, ヒト胎盤絨毛細胞株JEG-3, およびヒト卵巣顆粒膜細胞株KGNを用い, 必須微量元素の欠乏および過剰状態での各種金属トランスポーター, および性ホルモンバランスの維持に重要な働きをするアロマターゼや17β-HSD Iの発現量を, リアルタイムRT-PCRにより測定した. さらに, ^3H_2O遊離アッセイ法によりアロマターゼ活性を測定した. その結果, 必須微量元素の栄養状態により, 鉄代謝に関連するDMT1およびTfR1, 亜鉛代謝に関連するZnT1, さらにアロマターゼの発現量が有意に変動し, また, アロマターゼ活性も有意に変動することが明らかになった. これらのことから, 妊娠時の必須微量元素の栄養状態が, 母体および胎児に重大な影響を及ぼす可能性が示唆された. 平成21年度は, 妊娠マウスを用い, 栄養状態による各種必須微量元素の臓器分布等を検討する.
|