本研究では栄養情報を誰でもいつでも入手できるシステムを開発することを目的としてきた。その一環としてICタグとフードモデル、PC、ソフトウェアを組み合わせた新しい栄養指導ツール(SATシステム)を開発し、妥当性と最適な運用方法を検討した。基本的な食事調査や栄養素摂取量の判断に必要なフードモデルの種類、ツールの運用方法の検討では、秤量法(3日間)、24時間思い出し法による食事調査と、SATシステムによる食事調査を組み合わせた妥当性研究により、SATと秤量法との間に有意な相関関係が得られた。これらのデータから、フードモデルの種類、数、調査方法などについては効果的に運用するためのマニュアルが作成できた。一方で、フードモデルの選択の仕方、代用などについては栄養士などの専門職のサポートにより調査の精度が向上することも示唆されており、瞬時に栄養の情報を提供できる反面、対象者が正しく情報を活用するにはさらなる工夫が必要であると考えられた。地域で行われている健康教室などの保健プログラムにおいて対象者にSATシステムを活用した栄養指導を行った。教育に対する対象者の満足度は高く、体重等の変化についても好ましい結果が得られた。ICタグは非接触で複数のデータを同時に読み取ることが可能であるため、料理や食品の組み合わせによる栄養バランスの取り方などを提案する際に非常に有効なツールであることが明らかになった。また、教育だけでなく、システムの組み合わせを変更することにより、たとえば、栄養情報が食品の付加価値として購買意欲などを高めるなどの効果もあると考えられた。今後、フードモデルだけでなく、カードやレシート、値札などにICタグを組み込むことにより、栄養情報のユビキタス化が可能になると考えられ、本研究はその一助となったと考えられる。
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